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【学歴社会】修士課程に行ってみる

ドイツは日本と同じく学歴社会です。

そのため、高めの学歴を持っているとそれだけで高めの給料をもらえることになります。実際に私が就活中にやっていた通訳のアルバイトでさえも、その時点で修士を修了していたため、わざわざ時給をあげてもらえたこともありました。(はっきりと「あら、修士を持っているのなら時給を変えなきゃね」と言われました。)

 

日本で学士を卒業している場合、海外の大学で学士課程を再履修する必要はほぼありません。知識不足だと感じたら、学士のコースをいくつか取ってみるのもアリです。

 

今回は「思い切って修士課程に行ってみること」のメリットを紹介します。

 

 

 

学士号と修士号の違い

ドイツにはそもそも学士課程はありませんでした。マギスターとディプロムと呼ばれる、いわゆる現在の修士課程のみが存在していたのです。

2010年までに世界標準である3年の学士と2年の修士制度をほぼ取り入れたそうですが、国家資格試験を必要とする法学部や医学部、教員課程は未だに昔の制度のままです。

 

まず、修士とはそもそもなんでしょうか。

学士で専門分野の基本を学んで、それをさらに深めていく課程であることはなんとなく想像できると思います。学士課程と同じく、教授や講師の講義を聞いて単位を取って最終的に修士論文を書いて修了です。

決定的な違いは最終的に提出する修士論文の「オリジナリティと新しさ」にあります。

 

学士では決められたテーマについて調べ、論理に則った事実を導き出していきます。

例えば、「◯◯がこう言って、XXがこう考えるので、このテーマの答えはこれである」といった形です。

また、こういった学術的な文章を書けるようになるのも学士の目標の1つです。

 

それに対して修士では、新しいことを自分で見つけていきます。修士論文を書く際、先人学者が作った理論を紹介して終わり、では審査に受かりません。決められテーマに対して、自分で導き出した結論で締めなければなりません。

例えば、「◯◯がこう言って、XXがこう考えるので、自分は△△という理論を提唱する;根拠は□□で、テーマに対する答えは▲▲である」といった形で、学士論文よりも掘り下げた形になっています。

 

私は哲学を専攻していたので、修論ヘーゲル弁証法っぽいなと勝手に思っていました。既にある理論(テーゼ)に反する、または別の理論(アンチテーゼ)から自分の理論(シンテーゼ)を導き出して行く感じです。

 

興味のあることを学んで自分自身の理論を作ってしまうのは、ロマンがありますね。

実際やっている途中は地味な作業もたくさんあり、大変ですが。

 

メリット1:自由度の高さ

必須科目が減り、自由度の高いカリキュラムを組むことができます。そのため、自分の興味のある分野により集中して研究できることになります。

 

やっていることは講義に参加して、ゼミでプレゼンして、レポートを書いて…と、学士とそこまで変わりませんが、時給12ユーロほどの割の良い学生アルバイトとして学士課程の学生に講師補佐として教える側にまわることができます。この際、教えている学生からのアイディアで自分が教えられることもあります。

 

講義では、原文をより掘り下げて、少人数で活発に議論することが多くなります。

議論のテーマは自分たちで決められることも多々あります。自分の修論のテーマを同期学生の意見を聞きながらブラッシュアップできるチャンスなので、積極的に発言しお互いに助け合って修論作成の準備をしましょう。

 

宿題としては、1つの講義やゼミに対して20ページほどの文献を読んで予習する必要があるので、毎日かなりの文献を読むことになります。語学面でもかなり鍛えられます。

 

メリット2:給料の違い・就職

冒頭で紹介した通り、給料面のメリットもあります。

Absolventaによると学士と修士卒の初任給は平均で12%の差になるそうです。(参照元Einstiegsgehalt von Hochschulabsolventen 2020

12%というとそこまで大きくはないように思えます。しかし、例えば年収が3万ユーロだとすると3600ユーロの差になります。月収の2500ユーロを大きく上回るので、決して小さい数字ではありません。

もちろん業界や役職によっても給料は大きく異なりますが、修士号を持っていることでキャリア形成にも良い影響はあれど不利になることはまずないでしょう。

 

就職や転職の際にも、同じ条件の人がエントリーしてきたら学歴の高い方を採用するのではないでしょうか。修士号までなら会社にとってもそれほど高い人件費にはならないはずです。博士号までいくと管理職や研究職でない、いわゆる平社員ポジションでは、オーバークオリファイド(高学歴過ぎて人件費がかさむ)で逆に雇われなくなることもあるようです。

 

勉強意欲はあるけど、将来研究者になるよりは普通に仕事がしたい、という人には修士へ進むことをおすすめします。

 

デメリットがあるとすれば、2年間という時間とお金を費やす必要があることです。そして、修論を書くのはそこそこツラいです。その分早く就職してお金を稼ぐのではダメなのか、といった葛藤があると思います。

しかし個人的には修士に進んで心からよかったと思うし、思う存分自分の好きなことを研究できるのは、この時しかありません。

 

修士課程に行ってみること、考えてみてはいかがでしょうか。